今回は、「勝ち続ける」ことは、むずかしい。
いや、無理だろうという話。
大学生の時、ファミコンを持って上京してきた同級生がいたの。
それで、アメリカンフットボールのソフトがあって、同級生に教えてもらいながら遊んでいたんだけど、ある時、勝ち続けるフォーメーションを見つけたんだ。
そのフォーメーションで攻撃すれば、100%タッチダウンできるの。
ある意味欠陥のあるソフトだったんだろうね。もう30年以上前だからさ。
それ以降、ゲームをすることなかった。
太郎も知っているとおり、お父さんは、まったくゲームに興味がないもんね。
ところが、勝ち続けるフォーメーションについては頭から離れなかった。
一度見つけてしまえば、楽して勝ち続けられる無双状態の戦術を。
30歳を過ぎて、自分で会社を興しても頭から離れない。
みんなが知らなくて、楽して勝ち続ける戦術を本気で探してた。

それで、なんと!勝ち続けられるかもしれない、ある販売方法を見つけたんだ。
もう有頂天になって。「天下とってやる」くらいな鼻息の荒さが1年くらい続いたと思う。
今、思えば本当にバカなんだけど、これで「楽して稼げる」と真剣に考えていた。
ところが、気づけば、お父さんと同じ販売方法の会社が多数現れていたの。
販売方法だけでなく、ネーミングやホームページのデザインなどそっくりなんだ。
しかも、真似した方は、お父さんの販売方法を土台にしてるから、より洗練されてる。
常に改善や改良を怠らず、先行者としてライバルたちよりも一歩先に進まなくてはいけなかったのに、現状に満足して変化しなかった。
気づいた時には、ライバルたちに飲み込まれて、同じような販売方法をする一社になってしまった。
そこで、やっと気づいた。
「勝ち続ける」ことなどない。
「勝った」「成功した」と思った瞬間から負けて、失敗し始めるのだと。
だから、常に進化させる努力をしなくてはいけないのだと。
もし、間違った方向に進んでしまっても、修正すればいい。
その場に留まってはいけないんだ。
それでも、勝ち続けることはむずかしい。
すぐにライバルが出現するし、時代も変わる。
競争環境が変わってしまう。
これは、宿命というか、定めのようなものだよね。
だから、あがくの。
こんな当たり前のことを40歳近くで、実感したんだから、情けないし、気づきに対して大きな対価を支払わされたと思っているけど、まぼろしが現実にあると思っていたんだから、当然と言えるよね。
勝ち続けることは無理だけど、負け続けることは簡単だから、困るんだ。